Wednesday, December 11, 2013

なんとセメスターがおわる。

そんなこんなでもう学期末です。あと2日でFall Semester 2013もおしまい!
なんだかんだこの一ヶ月忙しくて更新が滞ってしまいました。ということで、ざっくり近況報告。
前回の日付から振り返ると、10月末はマイアミで開催されたNational Dance Education Organization (NDEO)による学会に行って、11月半ばには2年生が振付をするMaster’s Concertに出演して、11月末のサンクスギビングくらいから期末という感じでした。

NDEOは、ワークショップがたくさんあって、学校でダンスを教えている人、スタジオで教えている人などさまざまな人たちが実践に役立つものを提供していました。もちろんペーパーの研究発表もあったのですが、ワークショップの方が数が多かったように思います。いろいろと思うところもあったのですが、それはまた今度。いずれにしても「こんなことをやっている人たちがいるのか」と世界が見えたのでよかった。個人的に一番面白かったのは、世界の舞踊教育事情に関するパネル。この国際的な企画は今年が初の試みだったそうで、6カ国の事情をそれぞれの国の代表が話すというものだったのですが、世界的に舞踊教育がどのような立場にあるのかと聞くことができたのは興味深かった。やっぱりどこにおいても芸術科目にするのか、体育科目にするのかというのは悩むところらしい(国の教育機関的にというか。わたしたちは芸術科目として入れたい)。どこも共通してあった問題点は、指導者の質と数のバランスの問題と環境(場所)の問題でした。
それから、学会に一緒に出かけた同期たち4人と一緒の部屋に泊まって、学会でミスする授業の課題のための話し合いや自分たちの舞踊教育に対する信念について夜中2時くらいまで語り合ったり、なかなか充実した時間でした。ABTのコースからはわたしだけの参加で、なかなか丸4日間一緒にいることなんてないメンツだったのでよかったなーと。学校教育における舞踊教育専攻の人たちは、ABTの人たちとはまた違った考え方を持っているから新鮮だし刺激になる。

そのあいだにもABTのカリキュラムを自分の言葉や知識でまとめなおすOutlineというものを作らなければならなかったり。これがなかなか大変で、バレエで使われるボキャブラリー(つまりパやポール・ド・ブラなどの動きの種類)の定義、目的、よくある誤りとその修正法についてまとめて、カリキュラムのレベルごとでどのように発展していくかを表にする、という作業。細かいのだけれど、調べていくと「ああなるほど!」と思うことやステップからステップの発展、またあるステップの誤りが根本的にどこから来ているかがだんだん分かってきてとても勉強になりました。わたしが珍しく連日3時近くまで起きて作業をするということが起きました(本当に大学院生って言えるのかというくらいわたし多分徹夜とかしないんだけど)笑 今学期は3歳からのPre-Primary Levelから10歳以上のLevel3までだったので、その分まで。それから先はまた来学期以降に追加されていきます。ひーひー言いながらABTの同期たちと頑張ってとりあえず制覇。

コンサートは、ABTコースの2年生が振り付けしたFrancesca the Chairというイスを使ったコミカルな友情作品に出演しました。わりと演技がメインなのですが、ところどころに結構マジなバレエのステップ(アレグロやジャンプのマネージュ)がちりばめられていて、音がいっぱいのバロックに合わせた作品で、とっても楽しかった!わたし以外出演者もみんな2年生だったのですが、仲のよさが出て楽しさがたくさん伝わったんじゃないかと思います。評判もよかったし。このメンツで来週焼き肉食べに行くのが楽しみで仕方ない…笑

ファイナルは怒濤のグループプレゼンの嵐。思いのほかたくさん学ぶことがあったパフォーミング・アーツのアドミニストレーションの授業は、実際にNPOにアポとってインタビューしてきて、その団体をSWOT分析した上で、今後5年のプランを提示するというもので、なかなか大変だったのだけど、面白かった。今までだったら絶対に足を踏み入れない世界だったので、仕組みがわかって面白いし、世の中捨てたもんじゃないと思える主旨をもった団体があるということが知れてよかった。けど、団体がインタビュー応じてくれたのプレゼン一週間前だったので準備も怒濤。それに加え、ABT-NTCの指導資格の試験もこの月曜日にあって、さらに今週プレゼン3つで、てんてこまい。今日やっと全部終わったので開放感にひたりつつ、時間があまりすぎてて困っているところ笑 

振り返ると3ヶ月とは到底思えない濃さだったけれど、考えてみたら一瞬でした。というか、この一年変化や面白いことがたくさんあって、本当に長い…笑 NYで舞踊教育、しかもバレエ専門で学べるなんてすごいとは思っていたけど、こんなにもしっかりとわたしの中に土台をつくってくれるようなものになるとは思っていませんでした。日本でマスターをやっていたときからだんだん「ああだからこれやりたいんだ」というようなmake senseする瞬間は結構あったのですが、それがさらに地に着くように整理されて結ばれた感じ。もう少し整理がついたらブログにも載せられたらとは思いますが、わたしのなかの舞踊教育に関するビジョンもしっかりしてきました。いままで学んできたことと照らし合わせることもこれからお休みにはいってじっくりやっていきたいなと思っています。でもここまで発狂せずに(いや多少はしたか笑)やってこれたのも、いつも助け合って励まし合う同期がいたからだなー!と思っています。感謝:) そしてABT同期とは土曜日にロシア料理を食べに行くのでこれも楽しみ笑 大学院一学期生き延びた!!!!と完全にみんな打ち上がってます。

12月後半は家族や友人たちが遊びにきてくれるので楽しみ!:) ひさしぶりのNYのクリスマスを満喫します。
次の更新がいつになるかわからないので、とりあえず、Happy Holidays to All!!

Friday, October 18, 2013

ABTのアウトリーチについて

いずれにしても書きたかったことではあるのだけれど、来週課題提出があるので今一度理解を深めるためにも。
(ブログなんて書かずにさっさとessay書いたほうがいいのでは?というのはおいといて)

American Ballet Theatre (ABT)は世界的に有名なバレエ・カンパニーです。プリンシパル・ダンサーにはバレエをやってる人なら誰でも知っているようなダンサーがわんさかいます。来週日本で公演を行うNew York City Balletとともにアメリカでも人気のカンパニーのひとつです。NYCBがリンカーン・センターを本拠地としているのに対し、オフィスやスタジオ、バレエ・スクールはNYにありますが、ABTはツアー・カンパニー(ヨーロッパの劇場のバレエ団のような拠点があるわけではなく、いろいろなところを巡業していく形態)として活動しています。日本もおそらくそうだと思うのですが、アメリカではカンパニーはNPOというかたちで運営されています。チケット収入と寄付金で運営されているわけですが、だいたいこれが半々くらいの割合が理想とされているらしいです。そんなに寄付金に頼っている、というかNPOとして運営しているということも知らなかったので、いろいろと目からウロコ。

さらにさらに。わたしもこのプログラムにはいるまで知らなかったのが、ABTの教育活動。プロのダンサーを育てるバレエ学校があるのはもちろん、公立・私立の学校と連携して教育現場におけるバレエのアウトリーチを90年代後半からやっています。
そもそもなんでこんなことをやっているか、というと、理由はいくつかあります。

ひとつは、未来の観客を育てるということ。おそらく世界中で共通していることとして、バレエの観客動員総数は年々低下しています。バレエが最盛期だった時期に通っていて、バレエを各地で「育てた」観客層が年を取っていくことも要因のひとつ。また、アメリカではバレエを観に行く観客層は、裕福な白人の特に女性が多い。チケットの金額もありますが、特にNYなんかではバレエを観に行くことが社交ステータスの一部になったりするわけです。いろいろと複雑な背景なのですが、とりあえず観客層を広げようとしたわけです。

もっと概念の中心になってくるもうひとつの理由は、芸術教育の重要性です。
特にNYは貧富の差が激しい街。5番街のきらびやかなイメージもあれば、ghettoと呼ばれる治安の悪い地区もあります。未だに昼間ですら危ない地区もあるわけです。低所得者には給食費が免除になるという制度があるようで、貧困地区にはfree-lunch率が90%を超えるようなところもあります。なぜそういうところに芸術教育を持っていくかというと、簡単にいってしまえば、芸術にふれることやプロジェクトを達成すること、達成感をとおして自信をつけたり、表現や発散する術を知ることが、いわゆる負の連鎖を断ち切ることにつながるから。日本ではあまり考えられないこと(大きく取り上げられないこと)かもしれませんが、恵まれた環境にいない青少年に、ちゃんとした教育を受けようという志を持たせること、犯罪率や未成年の飲酒・ドラッグ使用・妊娠などの低下にも芸術教育はつながると言われています。これについては、また後日詳しく書きます。が、とにかく、青少年たちが自分たちの力と責任でプロジェクトに参加することによって、少しでもポジティブに生きてもらいたいというところからきています。

いくつかプログラムがあるのですが、Make a Balletというプログラムでは、ABTからのTeaching Artistsがサポートをしながら年間通してバレエを創るということを行っています。面白いなと思うのが、ただ学校に出向いてバレエを教え込むのではなく、生徒たちがパフォーマンス・チーム、アドミニストレーション・チーム、プロダクション・チーム、デザイン・チームの4つに分かれて「バレエを創る」という点です。パフォーマンス・チームは実際のバレエを踊ったり振付をしたりします。アドミン・チームは、年度末のパフォーマンスに向けての予算計画や寄付金集めなどを行います。プロダクション・チームは、照明デザインと操作をはじめ、舞台の裏方と表方について学びます。最後のデザイン・チームは衣装と大道具のデザインと製作を行います。こうしたプログラムに参加することで、他の学業との兼ね合いも含めた計画性、タイム・マネジメントなども身につけることができる。

テーマは、それぞれの学校や年によって異なります。ABTのレパートリーにベースした年もあれば、美術作品にベースしたときもあります。パブリック・アートをテーマにしたときには、NY在住のパプリック・アーティストとコラボレーションを果たすことができたそう。実際に彼も作品を提供してくれたとか。最終的には、リンカーン・センターのメトロポリタン劇場でパフォーマンスが行われます(豪華!)。

このプログラムに限らず、テーマを決めるときには、学校との連携も必須。例えば、中学2年生は「環境問題」を年間通して学校で取り組みたい、ということであれば、環境問題にベースしたバレエを創ることもできます。パフォーマンス・チームに限らず、ほかの3チームも活動する上で、environmental friendlyにいこうとすることもできますよね。「バレエを創る」ことが最終的な成果にはなるけれども、その過程ではリサーチもあるし、グループ・ワークやプレゼンがあってもいい。さまざまな「能力」を駆使してやっていくので、(これも後日触れますが)ハワード・ガードナーの多元的知能(Multiple Intelligence)の応用ですね。

やはりなんでもそうなんだけど、実際にやってみないと何が起きているのかわからないし、興味もわかない、というもの。ただ観に行ったり、ちょっとしたワークショップだけでなくて、生徒たちの「現実」とバレエを具体的につなげて、それをコミュニティーの中で行っていくこと、しかも複数の学校で行っているのに何年も続けてやっていくことに、なによりも驚きました。金銭面も含めなかなか一筋縄ではいかないこともあると思うのだけれど、バレエでこんなことができるのか、というかやっていいのか、ということ。もちろんこれは、ABTというブランドだからできることでもあるのだけれど。別にこれをそのまま日本でやろうと思ったわけではないですが、この話を聞くたびに「じゃあ日本だったら何ができるのかな」と考えさせられます。バレエのスタジオの運営などについても学ぶというのは分かっていたのですが、こうしたことまで学べるとは思っていなかったので、思いもよらない方向からの刺激で、今まで暗かった脳みその一部が光った感じです。

これでも相当簡略化したので、NPOの活動などに詳しい方には突っ込みどころ満載だと思いますが、ちょっとした紹介ですのでご了承ください。こっちにいるあいだにもうちょっと勉強します!!

PS
ついでに、もうひとつ。ABTは面白いプロジェクトをこの9月に発足させました。Project Pliéというもので、これはより多様なバックグラウンドのダンサーを育てよう、というなんともアメリカらしいもの。観客同様、バレエ・ダンサーたちも白人が圧倒的に多いのが事実(例外もありますが)。今までのアメリカのバレエ・カンパニーに少なかった人種やethnicityにも学ぶ場・活躍する場を、ということでABTのバレエ学校への奨学金を設けたりしています。これのプロジェクトのすごいところはABTだけでなくて、他のいくつかのバレエ・カンパニーとも連携しているところ。ABTを引退したダンサーが他のカンパニーで監督をしたりというのもあるので、そうしたつながりもあるのかと思うと、すごいこと考えるなと思います。

Tuesday, September 24, 2013

今やってること。NTCの発端とバレエの訓練。

わたしが今学んでいるバレエ教授法、ABTのNational Teaching Curriculum(NTC)について。

とにかく授業が始まってからの3週間ほぼ毎日のように言われているのが、Training should be simple and classic. Style is something you learn and add on later.ということ。バレエの訓練では、ケーキのスポンジ部分をしっかりと作る。スポンジができたら、クリームである「スタイル」を塗って完成。でも違うクリームも塗ることができるから、どんなケーキでもできるようにしよう、ということ。たとえばのはなし。

おそらく世界中で見られることだとは思うけれど、特にアメリカでは、バレエのスタイルの影響の大きさ、存在の大きさは他の比じゃないのではないかと思う。

ただ問題はそのスタイルあるいはメソッドがどれだけauthenticなのかということ。どれだけ本物か、というのは、ただ単に「本家のオリジナルじゃないから偽物でよくない」ということが言いたいのではありません。いわゆるスタイルやメソッドが独り歩きすることは、バレエの世界ではかなり頻繁に見られること。特に自分の師から教わったことは「絶対」という暗黙の了解がバレエ界にはあるから余計です。

たとえば、ある振付家が同じ作品でもダンサーが変われば、そのダンサーに合わせて振付も変えたり、そのダンサーに合わせたアドバイスを与えていたとします。ところが、振付家の影響力・存在が大きすぎたがために、あるダンサーの特徴に合わせて言ったアドバイスが教典化されるというケースもあります。当たり前ですが、身体や動きの特徴は人それぞれ。特定の人へのアドバイスが、万人に当てはまるわけではありません。

こうしたアドバイスがスタイルやメソッドとして教典化されることが、なぜ訓練において問題なのかといえば、しっかりとした骨組みの形成よりも表面的な部分が強調されてしまうから。

作品を踊る上では、歴代のダンサーの踊りを研究して、真似をして、芸を磨く、というのは必要となることですが、訓練では話が違います。

正しい訓練を受けたプロのダンサーは、技術の基礎ができあがった上で、自分のテイスト、スタイルや芸といったものを編み出したり、他のダンサーや振付家のスタイルを習得していきます。しかし、きちんと基礎ができる前のダンサー(あるいは習得者)が、いわゆる見栄え重視の「飾り」となるスタイルに重点がおかれた訓練を受けたらどうなるでしょう。結果としては、自分のバレエのベースとなる基礎がないために「土台のない家」のようなことになります。現実的な問題として、技術的な基礎が正しく習得できていないと怪我(急性・慢性どちらも)にもつながります。

バレエには、いくつかの流派(school)があり、伝統的なものでいうと、ロシアのワガノワ、イタリアのチェケッティ、フランスの3つが挙げられます(ブルノンヴィルは特殊だからおいときます)。それぞれが異なる文化圏で形成された流派なので、顔の付け方や手の形など異なるところがあります。しかしこうした違いは、それぞれの流派の美学・哲学など、根底に流れるものに基づいて形成されたものであって、そのコンテキストから外れて生まれたものではありません。

畑は違うけれど、世阿弥も同じようなことを言っています。手元に伝書(『花鏡』)がないので正確な引用はできませんが、わたしが修論に書いた内容からすると「いきなり名人の真似をしてはいけない。名人を真似るのは師匠についてしっかりと稽古を積んでから」ということ。名人は、基本の「型」というものをそのまま演じるわけではありません(それじゃつまらないし、名人じゃない)。型を崩しているのかもしれないし、型どおりよりも控えめに演じているのかもしれない。けれども、それは型を習得したうえでの演技であって、その名人の演じている「形」だけを素人が真似ても、土台となる型ができていないから、真の芸にはならない、ということ。ましてやその「形」が訓練や稽古のベースとなっていたとしたら、どうでしょう。

こうした問題に着目して、きちんと訓練された、健康なダンサーを育てるにはどうしたらいいかということを追求していって出来たのがABTのNTCとなるわけです。

ABT創設メンバーはチェケッティの教え子や孫弟子だったため、カンパニーの歴史やアイデンティティを考慮した上で、NTCではチェケッティの用語が使われています。それでもチェケッティの指導法をそのまま試みているわけではありません。この動作はどこから来ているのか、初めてやったのは誰なのか、誰がこうすると決めたのか、流派でどう違うのか、何が「独り歩き」の結果として定着したもので何がauthenticなものなのか、などなど。このカリキュラムをつくるにあたってカリキュラムの創設者たちが網羅したバレエ教授法や歴史に関する文献や情報量はハンパじゃない。「このエクササイズはパリ・オペラ座、これはワガノワの」というものもちらほら。前の記事にも書いたけれど、カリキュラムを組み立てた1人はオペラ座で訓練を受けたダンサー。彼らが師事していたAlla Osipenkoはワガノワの最後の弟子のひとり。とにかくコネもすごい。2008年に始まったばかりのものなので日本はもちろん、アメリカでもまだあまり知られていない。かといって、突然作られたものではなく、彼らが以前教えていたプライベートのバレエ・スタジオやバレエ学校で得た経験と知識と一緒に相当な年月をかけて形成されたカリキュラムなのです。

カリキュラムは、実際のレッスン内容だけでなく、メディカルの専門家も招いて作られたもの。解剖学的に一番無理なく効率よくできる方法についてはもちろん、生徒の年齢によって異なる発達状態にも注目した指導法。例えば、5、6歳まではロジックはもちろん、まだ人間として必要な能力が発達しきっていないから、本格的なバレエのレッスンはもっと後になってから、というのもその1つ。思春期の生徒たちにはどのようにアプローチするべきか、ということも触れます。

とりあえず、こんなことを勉強しています。今は学んでいるレベルのレッスンを受けて、その内容のポイントや重要性についてのレクチャーを受けています。たまに解剖学や音楽(ピアニストさん)のレクチャーなんかもあります。


こうして文字にしてみると、今までやっていた研究と重なる部分があることに気づいたりして面白い。これでまたバレエに限らず学校における舞踊教育なども含めた教育理論の授業と合わせて考えると矛盾点が出てきたりしてさらに面白い。課題ばかりに追われていてもしかたないので、たまにはこうして振り返ったりしながらライフワークである「舞踊と人間の関係」について考えてるのも必要だなと実感。

ざっとした概要なので、本当はまだまだ言いたいこといっぱいあるのですが、今日はここまで。

Thursday, September 19, 2013

Fashion meets Ballet: NYCB Fall Gala 2013

今日は舞台記録*をかねて、わたしの大好きなNYCBのご紹介。
New York City Balletはアメリカの大きなバレエ・カンパニーのひとつで、リンカーン・センターが本拠地。1948年に振付家George BalanchineとLincoln Kirstein(プロデューサー兼キュレーターのようなことをしていたすごい人)が設立。バランシンは、アメリカのバレエを築いたと言っても過言ではないほど。日本には5年ぶり(かな?)で10月にツアーに行くのでお見逃しなく!笑 

実は先日のシーズン・オープンの公演(17日)の「白鳥
の湖」も観に行ったのですが、今回はガラについて。
Fall Galaは、有名デザイナーとのコラボレーションでNew York City Balletの秋のシーズンを明けて、カクテル・パーティーとディナーがリンカーン・センターの劇場のホワイエで行われる大イベント!わたしはただ新作バレエが観たいから行ったのだけど、本当に豪華!パーティーやディナーは寄付金集めもかねたイベント。

去年はValentinoが衣装をデザインした新作やバランシンのRubiesの衣装のre-designがありました。このGalaの実行委員会がまたすごくて、Sarah Jessica Parkerをはじめ、わたしでも知っているデザイナーや役者などが名を連ねる豪華ぶり。

今年は、ぜいたくにも3作品がworld premiere。

ひとつは、ここ近年振付で活躍し、NYCBのソリストでもあるJustin Peckによる新作 Capricious Maneuvers。多分わたしとそんなに年齢変わらないくらいの若い振付家なのだけど、NYTでも評判よかったので、ずっと見たかった振付家のひとり!Peckの作品はPrabal Gurungによるデザイン。
http://www.youtube.com/watch?v=NIDtLd7oEYE

動きとフォーメーションが抜群。きまぐれCapriciousという言葉がぴったり。音楽の雰囲気もだし(というか音楽からインスピレーションを得ているんだとは思うけど)、動きのちょっとしたニュアンスとその形の美しさが気持ちいい。爽やかな印象で、ちょっとユーモラス。ようするに、わたし好み笑 ただ衣装はこれじゃない方がいいんじゃないかとか思ってしまった…苦笑 ハーネスの黒い線はなくてよくないか?と思ってしまう笑 でもPeckはこれからが楽しみ!


ふたつめは、映画Black Swanでもおなじみ(なのか?)の振付家Benjamin Millepiedによる作品Neverwhere。ナタリー・ポートマンの旦那さんでもあり(わたしは見かけなかったのだけれどナタリーも会場に来ていたそう!)、パリ・オペラ座の次期芸術監督でもあります。彼の作品を見るのは多分今回が初めて。デザイナーはIris Van Herpen。黒のプラスチックっぽい素材を蛇腹っぽくしてみたりと、とてもカッコいい。というか、よく考えるなぁ!と脱帽。
http://www.youtube.com/watch?v=40FLJ3_TtBo

衣装があまりに奇抜なのでどんな感じになるのだろうかと思っていたけど、セットと照明の効果と彫刻みたいにダンサーたちで作り上げる空間が絶品。照明があたって黒光りするダンサーたち。女性ダンサーはブーツをはいているみたいに見える!新鮮。動きはPeckの方が面白いんだけど(あくまで主観)、空間の作り方がミルピエは素敵。時間のひっぱり方も、香水の宣伝でも見ているような気分。あれは映像に撮っても映えるんじゃないかと思う。ただ、途中で衣装に飽きてしまった。また映える瞬間もあるんだけれど、ファッションショーではないから、ずっと見ていて、さらにそれで動いていても飽きないというのはなかなかプロのオートクチュールのデザイナーにとっては難しいところなのかも?

それでもバレエはPeckのように動きの感じで表現するものもあれば、ミルピエみたいに衣装を含め舞台空間全体を使っての表現も可能で、うーむ、なんて面白いんだ!としみじみ。どれがいい、とかというのではなくて、どれもアリ、ということ。


みっつめは、前衛振付家(とプログラムには書いてありました)Angelin PreljocajのSpectral Evidence。この人は本当にもう天才なんだよなぁ。衣装デザインはTheoryのディレクター、Olivier Theyskens。男性は、牧師を連想させる黒のスーツっぽい上下で髪はピタっとなでつけてある。女性は白いふわっとするワンピースでダンサーによって身体の部位に赤い模様?が入っている。髪はおろしてあるから、男性とは対照的。曲はジョン・ケージなんだけれども、全然ケージっぽくない!ことば、歌、呼吸(電子)という感じ。
http://www.youtube.com/watch?v=hvp8DnoVHys

プレルジョカージュのこの作品はわたしの中では別格。intensityがすごい。素晴らしい作品についてはあまり言葉で説明しても仕方がないといつも思ってしまう。照明はいってから最後までずっとドキドキしていられるくらい。男性陣はときたま入るバレエのボキャブラリーが映える。スーツだけど細身に見える。女性陣と踊ると影みたいにも見える。男女、priestと魔女、logic and instinctという感じ。衣装との関係も相互作用で面白い。人間の根本にあるものが引き出される。作品でソロを踊ったRobert Fairchildが素晴らしい!あんなにいい味出せるダンサーだったっけ?と思ってしまうほど。彼とパ・ド・ドゥを踊っていたTiler Peck(わたしの大のお気に入りのダンサーなのだけど)とのパートナーシップとintensityも素晴らしかった。というか、バレエ・カンパニーでこの作品踊れるってすごい!!


最後は、バランシン振付のWestern Symphony。大好きなこの作品、生で観るのは初めてでこれも楽しみにしていたのだけど楽しかったー!!カウボーイが出てくる、いかにも、アメリカ!なエンターテイメントなバレエ。派手だし、音楽も楽しいし、スピードあるし、本当に楽しい作品。衣装はKarinska。短いチュチュと帽子がとっても可愛い!

バランシンはシリアスな名作もこういうpure entertainmentな名作も作れてしまうって本当に天才、と思いつつ、このバレエ・カンパニーを創設して、新しいバレエを上演する伝統を受け継ぐような精神を育ててくれてありがとう、と心の底から感謝しました。実は、ミルピエも元NYCBのダンサーであり、NYCBのNew York Choreographic Instituteで振付を学んだひとり(ペックもそう)。このInstituteもバランシンの新しいバレエ作品を創って、上演することの精神を受け継いでできたもの。

「伝統と創造」とかいうとありきたりな感じがするのだけど、それをやっていくことはなかなかできるものではない。

NY戻って来れてよかった、と思う瞬間のひとつでした。



*この記録は、わたし個人の感想であって、わたしの所属する大学、コースや団体等は一切関係ありません。

Friday, September 6, 2013

ひとまず授業。

まだあと月曜日が残っていますが、ひとまず一週間を終えて。
どんな授業をやっているかを紹介します。
ちなみに、ABTはAmerican Ballet Theaterの略です。わたしのコースはABTが考案したNational Teaching Curriculum(NTC)をベースにバレエの教授法を学ぶものなので、ABTはいっぱい出てきます。

①アート・マネジメント
ABTの教育部の方々が講師陣となって、NPOのマネジメントについて学んでいきます。ここまで来て、ドラッカーを読んでいます。去年日本で文化マネジメントのコースを取ったけれど、それは概論という感じ(とても面白かった)。こちらはもっと実践向き。どこかで必要になるようなものだろうとは思うけれど、今まで全く触れてこなかったものだし、そもそもNPOが実際どういうものかも分かっていないので、いい機会の新たなるお勉強。講師陣の二人は実際にABTであれこれ切り盛りしてる人たちなので、バレエの現場の人のpoint of viewが分かるのは面白そう。そのうちcity centerのマネジメントやってる人などなどもレクチャーに来てくれるそう。ちなみに、勉強するのはアメリカのことになるので、日本ではまた勝手が違うだろうけど、それはまたそれで勉強です。

②ABTの教授法のクラス
これは週3回の朝10時から1時までの授業で、前半90分はレッスンで後半に理論のレクチャー。まだ始まったばかりなので、どうやってABTがこのカリキュラムを作るに至ったか、なぜこの方法を取ったのか、「選ばれた一握りの人」以外の人も含めたバレエ教育はどうあるべきなのかをプログラムを作った張本人のRaymond Lukensからレクチャーされています。レッスンも彼が教えてくれます。彼がバレエを教わった人はワガノワの直弟子だし、バランシン本人が教えるクラスも受けたこともあるし、チェケッティも勉強して、ヌレエフと一緒に踊っていた経歴の持ち主。「例えば」と例にあげてくれる話がダンサー、そして教師としての実体験からきているものだし、本当にたくさんの(有名な)ダンサーたちを見てきているから説得力があるし、わかりやすい。昨日は、Raymondと一緒にこのプログラムを立ち上げた、ABT付属のバレエ学校Jacqueline Kennedy Onassis (JKO) Schoolの校長のFranco De Vitaの特別レッスン。彼はパリ・オペラ座で訓練を受けて、踊っていたダンサー。バレエに詳しい人でないと、この網羅具合のすごさが分かりにくいかもしれないけれど、とりあえず、今まで世界中で行われていたバレエのあり方を見ていった上で、人間の身体・脳の発達や解剖学など科学的な知見から考案されたプログラムです。レクチャーもだけれど、レッスンもとっても勉強になります。踊ったすぐあとに、話を聞いて、というプロセスでより一層理解が深まる。
あと1ヶ月に1回くらいは、ABT専属のメディカル専門の方が解剖学、動作学、栄養学、などなど、ダンサーの健康に関するレクチャーをしてくれます。バレエ・ダンサーのエキスパートなので、わたしたちダンサーも得るものがあります。

③舞踊教授法・教材
この授業、初回がユダヤ教の新年前日で、ユダヤ教徒の先生なので最初の15分でいなくなってしまい、あまり概要がはっきりしていません笑 が、とにかく教育の理論家たちの本やら論文やらをたくさん読んでディスカッションする、という授業みたいです。デューイとか読みます。もちろんドゥブラーも読みますよ!一番キツいと言われる授業。

④Kaleidoscope Dancers Company
この授業は、実質、ダンス・カンパニーとして機能します。意味がわからないと思いますが、最終的にはNYC各地の小学校から高校までの生徒たちを呼んでパフォーマンスを見せて、ディスカッションして、レッスンをして、ダンスを作って、見せ合いっこする、というワークショップをやるための授業です。コミュニティ・サービスをやっていく授業なので、カンパニーという形態を取っています。今年は、Dance Edの専任の先生以外に、この夏にこのコースを卒業したウガンダ出身のdance educater(彼もフルブライター!)が率いてくれます。ウガンダは東アフリカの国。わたしたちが普段アフリカン・ダンスとして目にするものは西アフリカのもの、あるいは西アフリカにベースしたものが多いので、東は珍しいとのこと。わたしも西アフリカの踊りはやったことあるのだけど(意外だろうけどあるんです!笑)、全然動きの質が違う。子どもたちに教えることになるので、子どものダンスを習ったのですが、歌いながら踊ります。普段踊りながら歌わないし、そもそも歌わないし!!みんなでひーひー言いながら、やっていました笑。でもとっても楽しい。2年目の人たちに「今朝Kaleidoscopeあったんだ」と言ったらみんな「わー!いいなー!!またやりたい。超楽しいよね!」と言っていました。ふふ。

⑤わたしたちも、そして先生もいまいち分かっていない授業 笑
とりあえずNY中のいろいろな資源を使えるように、という授業です。フィールド・ワークに行ったりするみたいですが、全貌いまだわからず。誰も理解していない。そのうち分かると思います。

⑥Laban Movement Analysis
これは月曜日なのでまだだけれど、とりあえずLabanという人が考案した動きの分析法を学びます。考えてみたら以前留学したときにこの理論の授業取ったなと思ったり。でも5年も前の話なので、頑張って思い出します笑

あと11月半ばにMaster's Concertがあるのですが、そのオーディションが明日あるので行ってきます。オーディションといってもそんなコワい感じのではないらしいです。多分コンテンポラリー・バレエの作品になると思うのだけど!

とりあえずこんな感じです。でも2年生には「んー、1月くらいになるまで多分何がどうなってるのかわかんないと思う笑」と言われました。

ひとまず頑張りますが、すでに楽しいです。

Monday, September 2, 2013

introduction

はじめましての方もそうでない方も。

2013年9月からのアメリカはNYCでの留学生活について記していこうと思い、ブログを立ち上げました。

留学先のニューヨーク大学(NYU)についてやわたしの専門、はたまた観劇記録なんかも含めてやっていけたらと思います。また今回の留学は、光栄なことにフルブライト奨学生として送り出してもらっているので、フルブライトのことについても触れていけたらなぁ、とも思っています。もちろん奨学金の存在は確かに大きいのだけれど、それよりも、なによりも、フルブライトを通した出会いの機会が本当に素晴らしいということを知ってもらいたい。

留学先の所属は、長いですが、New York University, Steinhardt School of Culture, Education, and Human DevelopmentのDepartment of Music and Performing Arts Professions (MPAP)のDance Education専攻の中のABT Ballet Pedagogyというコースです。そもそも学部よりも大きいくくりの「学校(school)」がある時点で、大学どれだけ大きいのと思ってしまいます。何を学ぶコースかというとバレエの教授法です。3セメスターのコースなので、2014年の年末には終わります。

軽く今回の留学についてのバックグラウンドを。
この春に日本の大学院で修士課程を終えて、そのまま博士課程に進学しました。今は、休学して、こちらに留学しています。
わたしの専門は、舞踊・舞踊教育で、ひらたく言えば「舞踊の稽古・訓練と人間形成」についての研究をしています。漢字ばっかりで難しそーとわたしが見ても思うのですが、やってることは結構単純です。
この春終わった修論は、上のテーマについての文献研究なのですが、研究を進めるうちに「これについては文献だけじゃなくて、実践がともなわなければダメだなぁ」と気づき、今回の留学に至りました。この留学が終わったら、日本に戻って大学院に復学して、理論と実践をあわせた博士論文を書くというプランです。
わたしの研究テーマについて、それから「舞踊」、「舞踊教育」という学問についてはまた後日詳しく書きます。

さくっと渡米してからの流れをまとめると、まずNashville, Tennesseeでフルブライトのgatewayオリエンテーションなるものが数日間あり(本当に楽しかった!)、それからNYにやってきて、昨日(9月1日)住処となるEast Villageのアパートに入居しました。NYなのに部屋が広い…。ちなみに、以前NYのLong Islandにある州立大学に留学していたのでNYは超ホームとまではいかないけれど、新宿よりはなにがどこにあるかがわかる程度にホームです。(全然参考にならない笑)

というわけで、というか、実は、明日(9月3日)から授業が始まります。
大学のオリエンテーションでほとんどの同期には会ったので、そこまでビビってはいませんが、ドキドキ。

でも、愛する、憧れのNYに住めるということ。しかもNYUでダンスの勉強ができるということ。大好きなNYCBのバレエもたくさん観られるし、大好きな作品がたくさん貯蔵されているMoMAにも行き放題!

これからの1年半が楽しみすぎる!!わーい!!


今日はここでおしまい。:)